▲次回公演

少し前の話ですが、某月某日、演劇や舞台芸術を作る人のためのWEBサービス開発をしているIT技術者集団「emoted」代表の富田さんにお会いして話を聞いて来ました。

昨年末から共同でアプリ開発をしているSTUDIO OVER DRIVEオカザキさんに、「富田さんっていう面白い人がいるんで、イトウさん一回会ってみませんか?」と誘われたのがきっかけです。

なんでも、「本職はインフラまわりのプログラマーさんだけど、最近すごい勢いで演劇人向けのWEBサービスを次々公開していて、小劇場界の集まりにも積極的に顔を出してロビー活動にも余念がなく、とにかくやる気と演劇愛に溢れたフットワークの軽い人なんです、だから、演劇人だけどITっぽい風を吹かしていい気になってる割に遅筆で粘着でフットワークしか軽くないイトウさんと話が合うかもしれませんよ。」

と、までは言われませんでしたが、概ねそういう主旨の誘い文句に導かれ、ITの聖地渋谷は道元坂その右脇にあるロイヤルホスト道玄坂店へのこのこ出かけてお会いしてきた次第です。


↑向かって左がSTUDIO OVER DRIVEの面々、右のイケメンが富田さん、撮影がイトウです

富田さんが主宰するemotedが現在展開しているサービスは、例えば以下のようなものがあります。


演劇フライヤア

「演劇フライヤア(β版)」は、演劇チラシ(フライヤー)の収集・配信プラットフォームサービス。

簡単に言うと、ツイッターで「@engeki_flyer」にチラシ画像URLを含むリプライを送ると、それを全力で世界に拡散して広めて宣伝してくれるという、制作さん大喜びなツールです!広め先は、Twitter、Tumblr、Facebook、Pinterest、ガラケー用サイト等など。

小劇場のチラシは各劇団、趣向を凝らして面白いものを作っている割に、公演後は特に日の目を見る機会もなく忘れられていくしかない儚い存在でしたが、そのデザイン性、アートワークとしての魅力に触れたいと思っている観客は存外多いものです。このサービスはそんな小さい(だけど深い)需要に光をあてて、チラシビジュアルの拡散、保存、一覧性を高めた「無くてもいいけど、あると…いいよね!」的なステキサービスです。

こちら(β版)なので、まだまだ機能はシンプルですが、利用者が増えていけば活用の幅も広がっていくこと間違いありません。個人的には、チラシのタグ付け機能みたいなのがついて、サービス内での検索性が上がると、アーカイブとしての価値も高まるんじゃないかなと期待してます。

ブログパーツが用意されてるので、演劇フライヤアから配信される最新のチラシビジュアルを、自分のサイトやブログに設置できます。見た目に悪くないので、観劇日記やレビュー等を書いてるブロガーさんなんかにはオススメかもしれません。

戯曲イーパヴ

「戯曲イーパヴ(α版)」は、テキストで書かれた「戯曲/台本/脚本」を電子書籍の流通フォーマットとして広く採用されているEPUB(イーパブ)形式に変換してくれるサービス。

ものすごく簡単に言うと、劇作家が書いた台本を、【サイトにコピペするだけ】で、電子書籍データに自動で変換して「本」にしてくれる画期的なWEBサイトです。もちろん無料で。

戯曲イーパヴで変換したEPUBは、電子書籍リーダー「Kindle Paperwhite」「Kindle Fire」などで閲覧可能。また、Amazon.com が運営する「Amazon Kindle ダイレクトパブリッシング」などのサービスを介して、全世界へ出版販売することもできる。のだそうです。

中小劇団の上演台本は、公演後お蔵入りするか、せいぜいコピー用紙で製本して二束三文でコアなファンに会場で販売するくらいが関の山でしたが、これからは全世界に向けて何億冊でも販売することができるわけです。すごい!

観客の側も「昔見たあの芝居のあの台詞なんだっけ?ちょっとAmazonで買って読んでみるか、ポチ!」とか、「次の全国高校演劇大会だけど、うちの部活はこの前観たあの小劇団のお芝居やりたいんだよね」「でも戯曲って数が売れないから一般的な出版社からはほとんど書籍化されなくて、されてもすぐ絶版とかだから、あんな小劇団の台本なんて手に入らないでしょ」「大丈夫、作家さんが電子書籍版をAmazonで売ってるから、今すぐスマホでポチ!」っということが簡単にできるわけです。女子高生!

電子書籍化をやっているサイト自体は他にもあります。でも「縦書きレイアウト」で「戯曲/台本/脚本」に特化したサービスをやっている「戯曲イーパヴ」は、その中でもかなり稀有な存在なんだと思います。テキスト入力も「人物名と台詞をタブ(Tab)区切り」して記述するだけの、極限まで簡単にした仕様です。

現在はまだ(α版)で、あくまで「テキストを電子書籍データ化」するだけの単純な機能ですが、利用者が増えて開発が進めばどんどんリッチな形式の電子書籍製作ができるようにアップデートされていくかもしれません。たくさんの人が利用して意見を送れば送るほど、開発のスピードも上がるはずなので、いろんな作家さんにどんどん利用してもらいたいものです。

ネビュラの公式サイトなんかでも紹介されてるみたいです。

▼【全世界への出版販売も可能】emotedが戯曲データの電子書籍化ツール「戯曲イーパヴ」の試験運用開始
http://www.next-nevula.co.jp/news-headline/?p=8662

TheaterMate(シアターメイト)(α版)

「TheaterMate(シアターメイト)(α版)」は、Webで見つけた公演情報に「みたい!」を表明して思わぬ観劇仲間とめぐり逢えるかもしれない、ソーシャル・ブックマーク・サービス。「ソーシャル・ブックマーク」が何かわからない人のために、Wikipedia先生から引用。
ソーシャルブックマーク(Social Bookmark、SBM)は、インターネット上のサービスの一つで、オンラインブックマークサービスの発展形。自分のブックマークをネット上に公開し、不特定多数の人間と共有する事で、これらを有益な情報源とすることができる。同一アドレスを登録している他人のブックマークを見たり、またタグと呼ばれる登録者が付ける分類用の語句により同一タグで分類している他人のブックマークを見たりすることで同じ指向のコンテンツが見付けやすくなる(フォークソノミー、ソーシャルタギング)。
↑わからない人を、余計わからなくさせる見事な解説文ですが。

使い方は至って簡単です。
【面白そうな演劇公演をみつけたら、詳細ページのURLを投稿する。】
それだけ!

そうすると、TheaterMate(シアターメイト)(α版)のページに表示されて、他の人がそれに興味を持つ。一つの公演の情報をたくさんの人が投稿した場合、「みたい!」の人数カウントが増えて、その公演が注目されてることがわかるので人気の公演を探せます。また、同じ公演に注目している人を探せるので同好の士にも出会えるというわけです。

Facebookの「いいね!」と「シェア」を足してそれだけに絞ったサイト…と考えるとわかりやすいかもしれません(少し違うのですが。)

話が少しそれますが、日本で「ソーシャル・ブックマーク」というと「はてなブックマーク」が最も有名で利用されているサービスだと思います。「はてなブックマーク」に投稿されたWEBサイトは、注目数順にランキングされ、上位30位以内に入ると、人気の記事としてピックアップされて、そこから一気に数万人のユーザーがサイトを見にやってくるという超巨大サービスです。著名なブロガーなら、必ず「はてな」にブックマークされて上位に露出することを目標に記事を更新していると言っても過言ではありません。

TheaterMate(シアターメイト)はその演劇公演に特化したバージョンだと言えるかもしれません。いつか小劇場中の劇団がTheaterMateでの「みたい!」の数を競い合うような日が来るのかもしれないし、そういう方向には進化はしないのかもしれませんが、将来が楽しみなサービスに間違いありません。

このサービスもまだまだ公開したばかりで機能が限られていますが、いち早く登録して注目劇団の盛り上げに一役買ってみてはどうでしょうか。

…と、上記の他にもemoted pickupsブログ記事での演劇×ITニュースの発信など精力的に活動されているのが技術者集団emotedであり代表の富田さんなわけです。こんにちわ。

「こんにちわ、富田です。」

早速ですけど、よりによって何で演劇…それも小劇場なんていう絶対にお金にならなそうなジャンルを対象に、ITサービスを始めようと思ったんですか?



⇒(続く)

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