早速ですけど、よりによって何で演劇…それも小劇場なんていう絶対にお金にならなそうなジャンルを対象に、emotedさんはITサービスを始めようと思ったんですか?
WEBサービスを公開するIT系の方のイメージって、例えば、あわよくば不労所得だぜ、あわよくば一山あてて大金持ちだぜ、Facebook! マーク・ザッカーバーグ! 六本木ヒルズ!って感じだと思うんですが。
↑向かって左がSTUDIO OVER DRIVEの面々、右のイケメンが富田さん、撮影がイトウです
「かなり偏ったイメージですねー(笑)」
そこに来て、演劇、しかも小劇場なんていう、言うなれば斜陽産業じゃないですか。小劇場界で動いてるお金って納豆の市場規模の20分の1で、しかもその5分の1以上が国からの助成金だって話も聞きます。どんだけ貧乏なんだよって感じじゃないですか!どんなに良い作品を作っても、サービスを作っても、そもそも払われるお金が無いんですよ!ヒルズ無理ですよ!
「いや、ヒルズはどうでもいいですけど…(笑) 僕もただ儲けようと思ってサービスを作ったわけじゃなくて、少しでも小演劇の界隈を盛り上げるお手伝いをしたくて始めたんです」
でも、他にいくらでも将来性のある業界があるじゃないですか。マゾですか。よほど演劇が好きなんですか。
「それもありますけど、もともと自分も小劇場で役者をやってたんです。」
え、そうだったんですか!どうりで佇まいがイケメン雰囲気というか。じゃあ、単純に演劇への愛情というか、活動の延長としてサービス開発をしてるんですか?
「いえ、自分としてはこれが全くお金にならないジャンルとは思っていないんです。今は、自分が劇団員時代に不便だなと思ったこととか、知り合いの演劇の方たちが欲しいと思ってるようなことの中から、とりあえず思いつく限りサービスを作って運営している感じです。その中から一つでもマネタイズできるものが出てくればいいなと。」
とにかく今は思いついたサービスを片っ端から作っていく時期だと。
「はい、そんなに大儲けには出来ないだろうけど、せめて自分と何人かが食べてくくらいにはと。例えば、今やってる中では、TheaterMateなんかが一番お金にしやすそうだなとは考えてます。」
なりますか、お金に!でも今の小劇場で仮にすごくお金を落としてもらえるサービス(または作品)を作ったとしても、もともと小さいパイを誰が一番たくさん食べるかっていうレベルに終始しちゃう感じありますよね。すぐ天井が来ちゃうって言い方でもいいかもですが。
「おっしゃるとおりです。だから、サービス自体が、演劇界全体の市場規模を底上げするようなものになって、演劇界自体を盛り上げるものでなくては成り立たないと思ってます」
なるほどー。「底上げ」って考え方はすごく良いと思います!例えば500人以下の動員数でやっているような人たちが公演を打つときの負担が減ると、小劇場の裾野がだいぶ広がりやすくなりますよね。辞めようって思う人を減らせるというか。で、裾野が広がれば広がるほど、ピラミッドの上の方にいられる人の人数も増えるわけなんで、裾野レベルでの負担が減るのはとても大事だと思います。
「そうですよね。何か、こういうのがあればってサービスありますか?」
やっぱり「折込みチラシ」ですかね。
「チラシですか。」
アレさえ無ければ演劇を辞めなかったって人すらいると思います。
「そこまでですか(笑) 劇場でもらったチラシ束を見ながら開演を待つのは嫌いじゃないですけど」
いや、折り込まれたチラシ束が悪いんじゃないんです。そのチラシを折込む手作業…っていうか劇団とかでそれを任される人間の負担が半端ないっていうか。
「ああー、そうなんですか」
そうなんです、準備から運搬、はさみ込み作業で数時間を食うし、交通費も自腹、それだけ大変な割に、やってもあんまり感謝されないんです、劇団内で。身分の低い立場の人間が行くような空気ありますし。それから、折込みチラシを受け入れる公演の主催劇団側も大変です。
「横からいいですか?」
なんですか、STUDIO OVER DRIVEのオカザキさん
「ITの進化甚だしいこのご時世、紙のフライヤーなんか、やめちゃダメなんですか?」
そのとおり!ってイトウも言いたいんですが…、残念だけど折込みチラシの威力は絶大なんで、やめられないんです。
「そんなにですか」
チラシの折込先を増やすと、やっぱり動員数増えるんです。当たり前ですけど、例えば、その辺の道を歩いてる人にチラシ配るとかと比べたら、劇場まで来て折込チラシを見てくれる人の方が、演劇のお客さんになってくれる確率が高いんで。それがわかってるから、大変でもやめられないんです。
「そうなんですか。あのチラシ束を挟み込みする人の立場から見たことはなかったですね…」
実はイトウ、これを解決したくてWEBサービスを作ろうとしたことがあるんです。3、4年くらい前に。
「え、そうなんですか!」
「モバイルオリコミ」っていう名前のサービスで、折込チラシをデジタル配信式に変えてペーパーレスにして、かつ各劇団の折込チラシ枠を広告枠として廉価で他劇団に販売して相互に収益を上げられるようにするASPを考えたんです。まあ、すぐ挫折したんですけど。
↑「モバイルオリコミ」企画書のキービジュアル
「なんですか!これ(笑)」
小劇場界でのチラシ折込み作業の縮図を、イトウの独断と偏見で絵にしてみました。
「あー、確かに『横の繋がり』とか『絆』とか言う方は実際にいますよね」
いやいや、「折り込むと芝居がうまくなる」もリアルにそう言ってる女優さんいましたよ!
「ほんとですか?この『デジタル嫌い』って(笑)」
それも意外と多いんですよ!特に年齢が上の方になるほど、IT的なものへのアレルギー半端ないです。演劇はライブで生で、目の前で感じれる熱量が…みたいな価値観が幅を利かせる世界なので、IT化がかなり遅れてる印象です。
「え、そんな感じなんですか?」
極端な話、芝居のストーリーの中に「インターネット」が出てくるだけで不機嫌になるような重鎮の作家さんや演出家さんがいるくらいですから(笑)
「ほんとですか(笑)」
いや、大真面目に本当ですって。今はチケット予約ってCorichチケットとか、オンライン予約を使うのが当たり前 になってきたじゃないですか。それすら毛嫌いして、わざわざ電話とメールで受け付けたのを手入力でExcelに打ち込んでプリントアウトして管理させるような大御所さんもいるらしいです。
「え…」
メールとExcel使ってる時点で、オンライン予約システム使えよ!って思いますけど(笑) そういう事言うと、「これだからパソコンに詳しい人たちは…って蔑まれるぽいです」
「ああ、パソコンに詳しい人って言い方はされますよねー。いや、別に"パソコン"には詳しくないよっていう(笑)」
とにかく、ITに関することは世間一般にくらべて一周遅れくらいだと思いますよ。さっき出てきたCorichチケットだって、広がり始めたの2007、2008年前後だったと思います。ほんの数年前です。それまで手入力で票券管理してたんすよ!ネット普及してから10年以上たってるだろって!
「たしかに遅いですね…」
オンラインの予約システムってその前にも存在してたんですけどね。eプラスとか、チケットぴあとか。でも、チケットぴあはおかしかったです!オンラインで予約された情報を、週一回FAXで送ってくれて、それに対して電話でやりとりして調整するんです!その他のやりとりはメールでしてるのにですよ!今はどうかわからないですけど。
「うーん…」
まあ、極端な例ばっかりになっちゃいましたけど。逆にITとかネットに過度な期待を持ちすぎる年配の演劇人の方もいらっしゃいます。よくわからないけど、TwitterとFacebookとYoutubeを使えば、安上がりに観客動員を増やしまくれるに違いない!的な。でも公式WEBサイトは昔作ったテーブルレイアウトのままみたいな。
「わかります」
そのうちLINEとTumblrって言い始めると思います。
「(笑)」
とはいえ、納豆業界の20分の1しかお金のない小劇場界なんで、やっぱりネットとかITとかちゃんと使ってくしかないと思うんですよ。
「それは同感です」
だから、富田さんみたいな演劇愛に溢れた技術者さんが、使いやすいサービスをどんどん開発して公開してくれるのはホント良いことだと思います。
「ありがとうございます!演劇界の人たちの活動がもっともっと便利になるようなサービスを作りたいです」
それから、演劇をやってたり、好きな人が喜ぶものもいいんですけど、今は演劇にそんなに詳しくないけど実は観たいと思ってる、潜在的な人たちを呼び込めるようなWEBやITの使い方もみつけて欲しいです。
「…と、言いますと?」
⇒(続く)
WEBサービスを公開するIT系の方のイメージって、例えば、あわよくば不労所得だぜ、あわよくば一山あてて大金持ちだぜ、Facebook! マーク・ザッカーバーグ! 六本木ヒルズ!って感じだと思うんですが。
↑向かって左がSTUDIO OVER DRIVEの面々、右のイケメンが富田さん、撮影がイトウです
▼前回の投稿
⇒【IT×演劇】舞台用プロダクト・サービスの技術者集団emoted
「かなり偏ったイメージですねー(笑)」
そこに来て、演劇、しかも小劇場なんていう、言うなれば斜陽産業じゃないですか。小劇場界で動いてるお金って納豆の市場規模の20分の1で、しかもその5分の1以上が国からの助成金だって話も聞きます。どんだけ貧乏なんだよって感じじゃないですか!どんなに良い作品を作っても、サービスを作っても、そもそも払われるお金が無いんですよ!ヒルズ無理ですよ!
「いや、ヒルズはどうでもいいですけど…(笑) 僕もただ儲けようと思ってサービスを作ったわけじゃなくて、少しでも小演劇の界隈を盛り上げるお手伝いをしたくて始めたんです」
でも、他にいくらでも将来性のある業界があるじゃないですか。マゾですか。よほど演劇が好きなんですか。
「それもありますけど、もともと自分も小劇場で役者をやってたんです。」
え、そうだったんですか!どうりで佇まいがイケメン雰囲気というか。じゃあ、単純に演劇への愛情というか、活動の延長としてサービス開発をしてるんですか?
「いえ、自分としてはこれが全くお金にならないジャンルとは思っていないんです。今は、自分が劇団員時代に不便だなと思ったこととか、知り合いの演劇の方たちが欲しいと思ってるようなことの中から、とりあえず思いつく限りサービスを作って運営している感じです。その中から一つでもマネタイズできるものが出てくればいいなと。」
とにかく今は思いついたサービスを片っ端から作っていく時期だと。
「はい、そんなに大儲けには出来ないだろうけど、せめて自分と何人かが食べてくくらいにはと。例えば、今やってる中では、TheaterMateなんかが一番お金にしやすそうだなとは考えてます。」
なりますか、お金に!でも今の小劇場で仮にすごくお金を落としてもらえるサービス(または作品)を作ったとしても、もともと小さいパイを誰が一番たくさん食べるかっていうレベルに終始しちゃう感じありますよね。すぐ天井が来ちゃうって言い方でもいいかもですが。
「おっしゃるとおりです。だから、サービス自体が、演劇界全体の市場規模を底上げするようなものになって、演劇界自体を盛り上げるものでなくては成り立たないと思ってます」
なるほどー。「底上げ」って考え方はすごく良いと思います!例えば500人以下の動員数でやっているような人たちが公演を打つときの負担が減ると、小劇場の裾野がだいぶ広がりやすくなりますよね。辞めようって思う人を減らせるというか。で、裾野が広がれば広がるほど、ピラミッドの上の方にいられる人の人数も増えるわけなんで、裾野レベルでの負担が減るのはとても大事だと思います。
「そうですよね。何か、こういうのがあればってサービスありますか?」
やっぱり「折込みチラシ」ですかね。
「チラシですか。」
アレさえ無ければ演劇を辞めなかったって人すらいると思います。
「そこまでですか(笑) 劇場でもらったチラシ束を見ながら開演を待つのは嫌いじゃないですけど」
いや、折り込まれたチラシ束が悪いんじゃないんです。そのチラシを折込む手作業…っていうか劇団とかでそれを任される人間の負担が半端ないっていうか。
「ああー、そうなんですか」
そうなんです、準備から運搬、はさみ込み作業で数時間を食うし、交通費も自腹、それだけ大変な割に、やってもあんまり感謝されないんです、劇団内で。身分の低い立場の人間が行くような空気ありますし。それから、折込みチラシを受け入れる公演の主催劇団側も大変です。
「横からいいですか?」
なんですか、STUDIO OVER DRIVEのオカザキさん
「ITの進化甚だしいこのご時世、紙のフライヤーなんか、やめちゃダメなんですか?」
そのとおり!ってイトウも言いたいんですが…、残念だけど折込みチラシの威力は絶大なんで、やめられないんです。
「そんなにですか」
チラシの折込先を増やすと、やっぱり動員数増えるんです。当たり前ですけど、例えば、その辺の道を歩いてる人にチラシ配るとかと比べたら、劇場まで来て折込チラシを見てくれる人の方が、演劇のお客さんになってくれる確率が高いんで。それがわかってるから、大変でもやめられないんです。
「そうなんですか。あのチラシ束を挟み込みする人の立場から見たことはなかったですね…」
実はイトウ、これを解決したくてWEBサービスを作ろうとしたことがあるんです。3、4年くらい前に。
「え、そうなんですか!」
「モバイルオリコミ」っていう名前のサービスで、折込チラシをデジタル配信式に変えてペーパーレスにして、かつ各劇団の折込チラシ枠を広告枠として廉価で他劇団に販売して相互に収益を上げられるようにするASPを考えたんです。まあ、すぐ挫折したんですけど。
↑「モバイルオリコミ」企画書のキービジュアル
「なんですか!これ(笑)」
小劇場界でのチラシ折込み作業の縮図を、イトウの独断と偏見で絵にしてみました。
「あー、確かに『横の繋がり』とか『絆』とか言う方は実際にいますよね」
いやいや、「折り込むと芝居がうまくなる」もリアルにそう言ってる女優さんいましたよ!
「ほんとですか?この『デジタル嫌い』って(笑)」
それも意外と多いんですよ!特に年齢が上の方になるほど、IT的なものへのアレルギー半端ないです。演劇はライブで生で、目の前で感じれる熱量が…みたいな価値観が幅を利かせる世界なので、IT化がかなり遅れてる印象です。
「え、そんな感じなんですか?」
極端な話、芝居のストーリーの中に「インターネット」が出てくるだけで不機嫌になるような重鎮の作家さんや演出家さんがいるくらいですから(笑)
「ほんとですか(笑)」
いや、大真面目に本当ですって。今はチケット予約ってCorichチケットとか、オンライン予約を使うのが当たり前 になってきたじゃないですか。それすら毛嫌いして、わざわざ電話とメールで受け付けたのを手入力でExcelに打ち込んでプリントアウトして管理させるような大御所さんもいるらしいです。
「え…」
メールとExcel使ってる時点で、オンライン予約システム使えよ!って思いますけど(笑) そういう事言うと、「これだからパソコンに詳しい人たちは…って蔑まれるぽいです」
「ああ、パソコンに詳しい人って言い方はされますよねー。いや、別に"パソコン"には詳しくないよっていう(笑)」
とにかく、ITに関することは世間一般にくらべて一周遅れくらいだと思いますよ。さっき出てきたCorichチケットだって、広がり始めたの2007、2008年前後だったと思います。ほんの数年前です。それまで手入力で票券管理してたんすよ!ネット普及してから10年以上たってるだろって!
「たしかに遅いですね…」
オンラインの予約システムってその前にも存在してたんですけどね。eプラスとか、チケットぴあとか。でも、チケットぴあはおかしかったです!オンラインで予約された情報を、週一回FAXで送ってくれて、それに対して電話でやりとりして調整するんです!その他のやりとりはメールでしてるのにですよ!今はどうかわからないですけど。
「うーん…」
まあ、極端な例ばっかりになっちゃいましたけど。逆にITとかネットに過度な期待を持ちすぎる年配の演劇人の方もいらっしゃいます。よくわからないけど、TwitterとFacebookとYoutubeを使えば、安上がりに観客動員を増やしまくれるに違いない!的な。でも公式WEBサイトは昔作ったテーブルレイアウトのままみたいな。
「わかります」
そのうちLINEとTumblrって言い始めると思います。
「(笑)」
とはいえ、納豆業界の20分の1しかお金のない小劇場界なんで、やっぱりネットとかITとかちゃんと使ってくしかないと思うんですよ。
「それは同感です」
だから、富田さんみたいな演劇愛に溢れた技術者さんが、使いやすいサービスをどんどん開発して公開してくれるのはホント良いことだと思います。
「ありがとうございます!演劇界の人たちの活動がもっともっと便利になるようなサービスを作りたいです」
それから、演劇をやってたり、好きな人が喜ぶものもいいんですけど、今は演劇にそんなに詳しくないけど実は観たいと思ってる、潜在的な人たちを呼び込めるようなWEBやITの使い方もみつけて欲しいです。
「…と、言いますと?」
⇒(続く)