はじめに
こんにちは。カメラマン兼レポーターのこだぬきです。ポン。当記事は、ゴリゴリの文系人間(狸)であるこだぬきが、ナイスストーカー主宰イトウシンタロウ氏の「初恋の女の子に告白していたら彼女になってくれていたかを、20年越しに聞きに行く」というロマンか迷惑か謎の旅にカメラマンとして同行しながら量子力学の基本的な考え方である「重ね合わせの原理」を学んでいくという【修学の記録】だポン!
(語り部がたぬきであることには深く触れずにいていただけると助かりますポン。人間誰でもアイデンティティに悩む時期はありますよね?)
■写真と文 こだぬき(日本の廃墟を冒険する写真ブログ「廃墟と無口な造形群」管理人)
■校正 神宮寺雄介
■協力 花まる学習会王子小劇場
■Special Thanks S谷さん
■企画・監修 イトウシンタロウ
おことわり
掲載されているイトウ氏の言った言葉や現象は、こだぬきの記憶によって書き起こされたもの、あるいは塗り替えられたものである場合があります。すべてが正確ではないということをお含みおき下さい。イトウ氏自身の言葉が聞きたくなった場合は、是非劇場へ…ポンポコポン。
※あと、この記事ものすごーく長いです。全5ページあります。お時間ある時に腰を据えてお読みくださいm(_ _)m
企画会議
この企画は涼しさの漂い始めた夏の終わり、イトウ氏に、王子にあるおいしい老舗パン屋明治堂併設のカフェに呼び出されるところから始まったポン。憧れのアフターヌーンティーをイトウ氏と繰り広げながら、話題は次回のナイスストーカー公演「量子的な彼女」に…。
『量子的な彼女』とは?
こだぬき
「量子的な彼女」ってタイトルが、まずよくわからないです。
イトウ
「量子論」はSFの世界では、すごい流行ってる学問なんだけど…。たとえば「原因」と「結果」ってあるじゃん。
「原因」は「結果」よりも過去にあるのが普通だよね。
それが逆の事もありえるんじゃないか、っていうのがあって、
こだぬき
意味がわからないです。
イトウ
うーん、じゃあ「重ねあわせの法則」はわかる?
出典:Figure2:Schrödinger’s cat.北海道大学大学院工学研究院・工学院広報誌 えんじにあRing 2013年7月号 ◆半導体で量子計算? Quantum computing with semiconductors?
こだぬき
(むずかしい言葉ばっかり使いやがって…)シュレディンガーの猫ですよね。箱の中の猫が死んでるか生きてるかは、箱の中を見てみるまではわからない。だから、箱を開ける前の時点では、猫は50%生きていて、50%死んでる状態。箱を開けた瞬間にそれが決まる。
イトウ
そうそう。箱を開けるという「未来」から遡って、「過去」の猫も死ぬっていう。
こだぬき
で、「量子的な彼女」ってのは何なんですか?
イトウ
だから、半分彼女で、半分彼女でない状態の重ね合わせって事かな…
こだぬき
え、どういうこと?
イトウ
自分、小学校5年から中学くらいまで「S谷さん」っていう女子がずっと好きだったんだよね。で、まあまあ仲良くしてたんだけど、その子には一切そういう事は言わなかったの。
だけど、もしあの時、ちゃんと告白してたら「彼女」になってくれてたのかなあ…って時々思うんだよ。
こだぬき
それで?
イトウ
つまり、ある意味でその「S谷さん」て、今現在のイトウにとっても「半分彼女であり、半分彼女でない」重ねわせの状態にある”量子的な彼女”なのかなあって思って。
こだぬき
(何言ってんだこの人)
イトウ
だから、もし今この2016年に「S谷さん」に会いに行って、「小学校の時、好きだったんだけど、告白してたらどうなった?」って聞いたら、「未来」から「過去」へ遡って、「結果」が収束するのかなと。
…「未来」から「過去」を変えられるんじゃないかな…と思ったんだよね。
こだぬき
(だから何言ってんだこの人)
イトウ
そういうわけで、今から「S谷さん」に告白しに行こうと思う。
こだぬき
イトウさん、すごく気持ち悪いです。
イトウ
それでね、
こだぬき
無視か
イトウ
こだぬきさんカメラマンとして同行してくれないかな。あわよくばその記事も書いてくれないかな?
こだぬき
うーん。まあ暇ですし、それはいいですけど、イトウさんの実家って静岡ですよね?旅費とかどうするんですか?
イトウ
うん、そこなんだけど、今回の上演劇場である花まる学習会王子小劇場さんに資金サポートをお願いしようと思ってるんだ。
こだぬき
え?劇場さんがそんな事してくれるんですか?
イトウ
花まる学習会王子小劇場は、ただの貸し小屋ってスタンスじゃなくて、劇場スタッフさんが劇団に親身になってちゃんと企画段階から相談に乗ってくれて、宣伝に協力してくれたり、予算のない若手劇団とかの相談にのってあげたり、劇場を使う劇団が良い作品を作って、興行として成功してもらって、少しでも演劇界を良くしていきたいっていう志を持ってるんだよ。
こだぬき
確かに、あんなに小屋付きスタッフさんがたくさんいますしねぇ。でもこんなふざけた企画、支援してくれますかね。
イトウ
いや、ふざけてないよ!やっぱ体で感じて来ないと、体重の乗った台本は書けないって最近すごくわかって。北川さん(花まる学習会王子小劇場 芸術監督)も同じ劇作家だから、きっとわかってくれると思うんだ。
イトウ
まあでも、さすがに全額は出ないだろうから、予算、少し多めに項目を盛っておいた。
こだぬき
あ、もう考えてたんですね。じゃあ、さっそくこれ持って王子小劇場に行ってみましょうよ。
花まる学習会王子小劇場の北川さん!!お金をください!!
▼北川大輔(きたがわ だいすけ)
花まる学習会王子小劇場芸術監督として、芸術環境整備に注力。
劇団カムヰヤッセン脚本・演出家。
北川
企画については、わかったんですけど、これはどういうことなんですか?
イトウ
取材で行くにしても、一応デートなんである程度お金はかかると思います。だけど、恥ずかしながら、前回、美術に予算を使い過ぎて赤字を出しまして、今本当に劇団にお金がなくて、不足分をイトウの全財産と借金で賄ってギリギリで
北川
いやいやいや…なんすか、このポルシェとか、クルーザーってのは。
イトウ
前、WEBの仕事してる時に見積書は多めに書いとけって教わって…。それに、やっぱ告白して結果を聞くなら、ちょっとでもムード良くしたいじゃないですか。
北川
でも小学校の時の?ですよね?今がんばる意味あります?
イトウ
量子力学って、「未来」からさかのぼって「過去」を変える事ができるんですよ。だから、今がんばる必要があるんです!
北川
衣装代が10万円なのに、美容院代が1万円てのが、おしゃれしたことないのバレバレすね…
イトウ
え、ちゃんとホームページ見て調べたんですよ。表参道の。カットが1万円くらいで
北川
カットだけですまそうってのが初心者なのバレバレっす
イトウ
そうなんだ…
北川
打ち上げ代まで入ってるじゃないですか
イトウ
カメラマンと諸々の助手入れて3人で行くんで、ちゃんとねぎらいたいなと…。つきましては、経費の合計109万5417円をサポートいただけないかと…。
北川
劇場費より高いじゃないですか!盛り過ぎでしょう、いくらなんでも
イトウ
一応、やりたい!と思ったことを、正直に全部書いてみました。ほんと、これの一部だけでもいいんで…どうですかね。
北川
ちょっと僕の一存で決められることじゃないんで…。社長に聞いてみますね
北川
あ、もしもし北川です。あの、今ですね、劇場費の割引をお願いしたいという劇団さんが来ていまして。はい、その台本執筆の、取材のためにどうしても、いろいろやりたいと言うことで…
北川
そうです、いや、わからないですけど、来てまして。はい、はい、で、ちょっと僕の一存では言えなかったので、常識的な範囲でならこっちの裁量で、多少の金額引いてあげても、どうかなと。大丈夫ですか?はい、はい、あ、はい、わかりましたー。
イトウ
…どうでしょう?
北川
全部はちょっと無理なんで、一部ってことでお願いします。
イトウ
なるほどです。
北川
あと、これ無駄が多いんでちょっとコストカットしましょう。まず新幹線、高いんで下(鈍行)で行きましょう。
北川
ポルシェは高いんでワゴンRで。ガソリンこんなにかかんないでしょう?
北川
クルーザーは論外、駅弁はコンビニのおにぎりで。
北川
ジュースはカクヤスで安いの買ってください。おやつは一人100円で。打ち上げは別立てで勝手にやってください。衣装は持ち寄りで。SDカード、Amazonだと1500円ですよ。なんすかこの、幽遊白書全巻ってのは?
イトウ
ちょっと彼女との思い出というか、エピソードがありまして
北川
中古で2059円てのありますね。このくらいかな。
イトウ
「ひよこ」は買ってもいいんだ…
北川
お土産は大事です。
ということで、合計は42583円で行けますね、この取材。じゃあ、この半分、劇場が持ちましょう。20000円値引きします
イトウ
いや…でも本当今、前回公演で出した赤字で、お金がなくて、
北川
うーん、じゃあ、ちょっとこれ見てください
イトウ
はい?
北川
この数字が、去年の劇場の売上金の総額なんですね。で、これが支出の総額です。
イトウ
えっ…
北川
どうですか。
イトウ
支出が売上の○倍じゃないですか…大丈夫なんですか?
北川
大丈夫じゃないですよ。
※⇒ fringe watch「劇場は、潰れます。」王子小劇場・北川大輔芸術監督が経営状況を赤裸々に公表、存続のために劇場支援を訴える
イトウ
あ、本当のやつだ…でもそこをなんとか。劇団も、潰れます。
こだぬき
(イトウさん、容赦ねェ…)
北川
わかりました。じゃあ、あと1万円、北川が個人的に出します。
イトウ
え、そんな、いいんですか?
北川
イトウさん台本上がるのホント遅いらしいですよね?
イトウ
はい、前回は小屋入りの2日前にラストのシーンがあがって…出演者さんに迷惑をかけました…。
こだぬき
自分が出演してた時も、ほんと大変でした…!
北川
役者さん、最低でも1週間はないと、勝負ができないです。だから、今回はどんなに遅くても11/12までに完本してください。それができない場合は、この1万は返却で。
イトウ
(思わぬ方向に話が)
こだぬき
11/12でも遅いです!
イトウ
え?
北川
じゃあ、切り良くゾロ目の11/11で。決まりっすね。これ、コピーしといて!
イトウ
…なんか、すみません。出資してくれた上に台本の心配までしていただいて
北川
いやいや、良い作品にしてもらえるなら、それでいいです。頑張ってください。
イトウ
(芸術監督の鑑だ…)
こうして、心優しい花まる学習会王子小劇場及び北川さんの個人的な心意気により総額3万円の予算を手に入れたイトウ氏。
果たしてこの予算でなんとかなるのか?
そもそもS谷さんって今一体何をしているのか?まず連絡がつくのか?
不安を抱えつつ、量子力学の謎を解く旅は始まったのだった…ポン
イトウ
予算97万円減った…。
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