※この記事は、ドキュメンタリ演劇・バンドキュの公演内企画によるバンド活動記録です
「オリジナル曲やればいいじゃん?」
一回目のスタジオ練習を終えたばかりのイトウにそう言ったのは、知人で昔ミュージシャンを目指していた元IT社長で今は共通の知り合いである某女子の家来的な存在になり下がっている、NICE STALKERバンド(仮)の顧問的存在であるところのM崎氏です。
彼はギターの持ち方から弦の貼り方、スタジオの予約の仕方まで、何も知らない僕ら演劇人を手取り足取り導く安西先生であり(太ってませんが)、スウィング・ガールズでいうところの竹中直人です(禿げてませんが)。
「いやいや、オリジナルなんてまだ早いっすよ!このひどい練習音源を聞いてくださいよ」
▼空も飛べるはず [初回練習] (スピッツ)
●皆がよく知ってる曲ほど、演奏力の拙さが際立ちます。
●コードの抑え方がわからなくて、演奏途中にイトウがスマホでググり始めるレベルです。(←前半、イトウのギターがいません)
●壊滅的な実力です。
「ひどいわ」
「ひどいですよ」
それでもこれはまだマシな方の音源です。そもそも昨日までただの演劇人だった自分たちには、スタジオのミキサーやらアンプやらについてるつまみの意味がわからないどころか、機器の電源をOnにすることすらままなりません。
▼電源が入れられない人たちの会話 [練習中の雑談] [audio: 01band_zatsudan_001_drmonitor_2012.8.30.mp3] ↑※注:クリックすると割と音が出ます。スマホ等でプレイヤーが表示されてない人は拡大すると出てくるかもです。
●「え、(自分の声)聞こえてる?本田さん?」(0:01)
●「え、あ、聞こえてるんで大丈夫です」(0:02)
●「あれ、帯金さん、ドラムのモニターって音出てる?」(0:05)
●「は?ドラムにモニターなんてあんの?」(0:09)
●「うん、ドラムモニターっていうのがあって」(0:11)
●「知らない!一回もやったことない」(0:13)
●「いや、なんかデカ過ぎるかなって思って」(0:17)
●「え?(怒) これどうすればいいの?」(0:18)
●「や、音出てる?」(0:22)
●「知らない、どゆこと?え、は?(怒)」(0:23)
●「や、そうじゃなくて、あの、ドラムの人がうるさいから他の音が聞こえないじゃん」(0:27)
●「全然聞こえない(怒)」(0:33)
●「だから、モニターで、拾うんだけど…まあ、出てないから」(0:34)
●「電源入れてないだけじゃん?」(0:38)
●「どうやるのか知らない(怒)」(0:39)
●「え…」(0:41)
●「(しばらく試考錯誤)」(0:42)
●「(気まずいので、なんか自主練習を始める他のメンバー)」(0:46)
●「(電源のことはなかったことにしよう…)」(1:06)
●「(なんか全員で演奏はじめる)」(1:21)
●「(演奏終了、ぬるっと話題を変えるイトウ)」(2:49)
さらに「イトウさん、わたしボーカルがいい。」と言い出した帯金(Dr.ドラム)が、強引に本田(Vo.ボーカル)をドラム席に座らせ、マイクを奪い取って歌い始めたブルーハーツの音源。
▼リンダリンダ [初回練習](ザ・ブルーハーツ)
●はなっからギターの音(3音目)が風雲急を告げる感じになってます。
●そして、いざ演奏が始まると2本いるはずのギターは聞こえず何故かベースだけが鳴り響きます。
●そして、帯金(Dr.ボーカル)の歌声の(よく言えば)自由さ。
●そして、生まれて初めてドラムを叩くはずの本田(Vo.ボーカル)が意外と叩けてる。
●そして、あまりのひどさに誰ともなく演奏をやめるメンバー。(3:14)
●「…イ、イエー!」とりあえず言ってみるイトウ。(3:17)
●「い、いやあ、この曲が一番…これ、いいね!」さすがに顔に縦線が入った状態の帯金(Dr.ドラム)(3:24)
●「おまえ、あとで(録音音源を聞いて)吠え面かくなよ…」(3:29)
●「いやあ、この出来なさ具合が…凄い!芸術的なできなさ具合だね!」(3:32)
…こんな状況でオリジナル楽曲なんて、真面目に音楽やってる皆様に申し訳がたちませんてばよっ!
「いやこのレベルだからこそ、逆にオリジナル曲が必要なんだよ」
なんですとっ!
「正直言って、今の君たちに必要なのはスタジオでの合わせじゃなくて、自宅での地道な反復練習だよね」
おっしゃるとおりです。
「でさ、それってすごい辛い作業なんだよ。そりゃ始めたばっかの頃は楽器触ってるだけで楽しいんだけどさ、すぐにそういう時期を過ぎて、指がスムーズに動くように同じフレーズを何十回も繰り返し練習するみたいなのが必要になってくるのね」
そうでしょうね。
「それってさ、モチベーション維持するのがすごい大変なんだよ。」
はい。
「そこでオリジナル曲ですよ。世界に一つ、自分たちだけのための楽曲だって思えば、家で一人で弾いてても頑張れるんだよ、これが、なぜか」
おおーなるほど!
「とりあえず、メロと各パートのプロットは俺がさっと作ってくるからさ。みんなで歌詞考えたらいいじゃん。」
マジすかー!
⇒(続く)