▲次回公演

とうとう式場選びに行くことになりました。

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これまでに2度、この場をお借りして書いてきた、
『春に、飲んだときのノリで「絶対いつか結婚しようね」「うん、そうだね」ということになった』某女子。

 
彼女と夫婦を偽装してマンション見学に行くこと2棟。
(1、都内4280万円 2、武蔵野市内デザイナーズ・マンション3998万円

 
「とか言って、なんか、もう、本当は付き合ってるんじゃないの? 微妙にいちゃいちゃしてるし」

 
みたいに、そろそろ思われる方のいらっしゃるかもしれません。思っていただければ光栄です。
そうやって、世界のすべての方が僕ら2人を誤解してくれるようになったとき、 偽装が偽装でなくなる日が来るのかもしれません。来たら来たで非常に困りますが。
今のところは、まだ「偽装」です。

 
ただ「偽装」と言えど、男女が熱の高い関係を維持していくためには、常に、より新しい、より強い刺激を求めていかざるを得ない、というのは通常のカップルと同じようです。 

 
上記「武蔵野デザイナーズ・マンション」からの帰り道、女子が言いました。

 
「ねー、嘘でいいから式あげる?」
「え?」
「もしくは、嘘で、婚姻届け出すとか」
「それ、嘘じゃなくない?」
「うわ、テンション上がってきた!来週は、式場探しか中野区役所ね☆」

 
さすがに、公的機関を欺く覚悟はまだありません。

 
そのようなわけで、その次の週は、某・式場の斡旋会社が主催する、ブライダルフェア(@横浜バスツアー)に出かけることになりました。

 
申し込みしたホームページの触れ込みによれば 
 

・創業40年、23,000組のカップルに式場をご紹介
・バスで回る無料見学会は、移動もスムース、ラックラク!
・式場でのランチ&ティータイムが付いてふたりで1000円ぽっきり
・見学会ならではの、模擬挙式・ドレス試着・料理試食会などがテンコ盛り!
・デート気分で見に来てネ!

 
各文言、文末に微妙なセンスを感じつつも、

 
「試食!?行く!」

 
という女子の高テンション。というか、1000円で女子と横浜デートなんてこの上なく安い。
勢いこんで、バスツアーを予約したわけですが。

 
 
当日、まさかの遅刻。

 
 
自分も女子も23区在住ですので、横浜に9:45集合はちょっと早いなー、思いつつもまあ大丈夫、タカをくくっていたらば、待ち合わせの新宿駅に女子が現われない。
電話してみると、「えへへ、ごめんね。さっき家出る寸前まで行ったんだけど、やり直しくらっちゃって」
なんぞそれ。なんぞ。可愛い女子には謎が多いぜ。つぶやいて、時間つぶしに駅構内の「東京ばな奈」や「黒ごまプリン」をじっくり見学。「今日は1000円以外使うものか」強い意志で銘菓をみつめながら女子を待つ30分。

 
結局予定より5本遅い東横線に乗り込んで、2人、一路横浜へ。
運良く特急に乗れたため、遅刻を謝るのも早々に始まった女子の「サボテンが生霊をはね返す」話に様々な意味で心奪われているうち横浜駅到着。
お、間に合うか、思ったのものの、サボテンの呪いで道に迷い15分遅れで現地着。

 
しかし、あたりを見回しても、その場にそれらしい人はいません。
「どうしよう、おいてかれちゃった?」いや大丈夫、右往左往、焦っていると 「あ、伊藤さん?」
声をかけてきたのはその辺のおばさんにしか見えない格好のその辺のおばさん?
「ちょっと待ってたのよー(語尾上がりめ)、さ、こっち、こっち」僕の腕を掴んで走り出します。
え、いきなりタメ口で何をなさる。「みなさんね、チャペル前で、待ってらっしゃるの」 もしや、斡旋会社の人ですか。てっきりマンション見学のように、スーツの社会人が出てくるものだと。

 
状況を把握しきれないまま、小走りに会場ホテルのロビーを突っ切り、「わたし、式場カウンセラーの丸林(仮名)です」おばさんが自己紹介。「どうも伊藤です。」腕、痛いです。「遅刻してマジサーセンした!!」なぜかバイト先みたいな女子の謝罪。「全然いいのよ、今始まるところだから」の割には、僕の腕をあり得ない力で引っ張っていく丸林女史。その早さにやや置いてかれる女子。最後は結局3人半ダッシュで、会場チャペル前の小部屋に駆け込みました。

 
駆け込んだ小部屋には、品の良い応接セットが数組あって、それに座るカップルずらり32組。壁際には、ケータリング・コーナーがあって、ジュースやコーヒーのポットにケーキ皿?
ソファに座り、女子がケータリングへ立とうとした瞬間、説明会がはじまりました。

 
「どうも、本日みなさんと一緒に式場をまわらせて頂く、丸林(仮名)でございます。まずは、みなさんに今日のツアースタッフ、カウンセラーをご紹介いたしますね」

 
で、出てきたのがまた、普通のおばちゃん追加で×5人
「なにあれー普通のおばちゃんじゃん!」
たしかに、なんだか親戚のおばちゃん心配で付いて来ちゃったわよ、的な風情の、親しみ?いや、もはやわざとそういう演出かもしれません。
「あたしさ、丸林さん?あんましょぼい格好だから、最初便所そうじかと思っちゃったぎゃはは」
遅れてきた上に私語を慎まない二人に対して、温かくも厳しい視線が注がれます。
ちょ、ちょっと空気やばそうだし空気読もう女子。
「ねえ、今ケータリング行って飲み物取ってきたら怒られるかなあ?」
怒られる。いや、たぶん怒られないけど、心の中ですごく怒ると思う。
「ぶ!ねえあの男の人、湘南乃風みたい」
そうだね。式場見学なのに、頭に手ぬぐい巻いて、おかしな人だね。あ、でも新婦の人は美人だよ。まあ×××(女子名)には負けるけどね☆ もう、シンタロウさ~ん。あはは。

 
気づいたら完全に、問題児カップルでした。
全12時間、3会場を見てまわる団体行動、スタート15分でこの目のつけられよう。
大丈夫かな、不安に思っていると、
「♪ ああー父さん、かあさ~ん ああ~ふふふふんふんふんふん~」
おそらく『ハッピーサマーウェディング』と思われる曲を口ずさみながら、女子がなにやら携帯メールにメモを取っています。何書いてるの?
「今日、あったこと、イトウさんがあとでブログに書きやすいようにメモしてるの」
画面をのぞいてみれば「便所のおばさん、湘南乃風、たぶんヅラ」等の文字。

 
いい子なんだ。


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